日本で少林寺というと、だいたい思い浮かぶのは1982年に日本でも公開された中国の映画のイメージが強いことと思います。
しかし、日本でいう少林寺拳法は、関係がないわけではありませんが、系統立てて作られたのは戦後の日本でのことなのです。
少林寺拳法って?
少林寺拳法は昭和22年、四国の香川県多度津という小さい町で興りました。
開祖である宗道臣(そうどうしん)という人は戦争中に中国にわたり、様々な武術を学んでいました。
戦後の混乱期のさなかに大陸から引き揚げてきた彼は、あまりに荒廃した日本の状態を嘆き、その状態を脱するために必要なのが『人・人・人・すべては人の質にある』と悟り、武道を通した『人づくり』の行を始めた、というのです。
若い人を集め、教育を施し、その彼らがまた日本各地に教えを広め、今では国外にもその輪が広がっている、ということなのです。
開祖・宗道臣は1980年に亡くなりましたが、今ご高齢の先生方の記憶の中には、開祖と、共に少林寺の初期を支えた豪快な先生方の伝説がいきいきと残っているのです。
そんな少林寺拳法は営利団体ではありません。
各地の道院の先生方はそれぞれに生業となる仕事を持っていて、『少林寺拳法を教える』という行為に対しては給与が発生していないのです。そういったシステムも、少林寺拳法が全国各地でほぼ同一規格で学習できる素地にもつながっているような気がしています。
社会人にこそおすすめ
少林寺拳法は、一度入門すると、今はそのデータが本部で一括管理され、IDが付与されています。そのIDは一度少林寺拳法を離れたとしても名前とリンクした状態で残ります。
そのため
●子供時代にやっていて、受験で離れたとしても、高校や大学で復帰したり。
●社会人になって、子供と一緒に練習したいな、と思って復帰したり。
そうした人たちに広く門戸が開かれていることも少林寺の大きな特徴です。
前述のとおり、少林寺拳法は開祖の弟子たちによって広められ、今は共通の教本によって技を学習します。
また、その級や段に応じて内面を磨いていく読本という教材もあり、少林寺を学ぶ上で必要な知識も深めていくことになりますが、そういうものも全て共通です。
先生方も定期的に県単位や本山での研修会があり、拳士の見本として研鑽を積んでいます。
全国どこにいても続けられる
そうしたシステムのおかげで、全国の道院のどこでも、殆ど同じように技を学べるのです。
我が家でも、子供たちが習い始めてすぐに転勤があり、一回目の転籍をしました。ずっと長い間お世話になっているのは、その転籍先の道院です。
長男は高校受験で一度フェードアウトし、次男は進学した高校の少林寺拳法部に転籍し、二段まで取得しました。
また、そんな息子たちを少林寺拳法の世界に引き込んだ夫は大学時代に三段を取得してから休眠となり、単身で転勤して行った先で少し時間にゆとりが出来て、訪ねた赴任先の道院の先生方に恵まれ、一念発起して四段を取得しました。
社会人にとっては、そういったフレキシブルさは魅力なのではないかと思います。
ライフスタイルに合わせて長く続けれられる
まず、稽古を上記のように転勤しても転居しても続けやすい、ということ。
自宅の近くや職場の近くで兼籍(複数の道院に所属する、ということ)して、通えるところ、通いやすい時間に稽古をする、というやり方もあります。
基本的には週に二回、大会前などには三回になる稽古ですが、みなそういうやりくりをして参座しています。
また、長い間休んでしまって『休眠』している場合でも、ちょっと体を動かしたいな、と思えば手続きをすることなく『参座させてください!』とお願いすることで、まず拒まれることはありません。しかも、それが馴染みのない道院であっても同様なのです。
我が家でも夫の単身赴任先の道院の稽古に、夏休みなどの長期休暇の間には何度も混ぜて頂きました。場所は変わっても、やることは同じ。その安心感はとてもありがたいものでした。